「夫婦仲が悪いわけじゃないんです。でも、セックスはもうずっとしてません」セックスレスの相談を受けるときに多くの人が言う言葉がこれです。
ケンカばかりしているわけでもない。浮気もしていない。むしろ、家事や育児も協力し合っているし、休みの日には一緒に出かける。手をつないだりキスしたりもする。なのにセックスだけがない。
「セックスレス」と聞くと愛情が冷めたイメージがあるかもしれませんが、実際にはセックスをしていないだけで、夫婦関係は良好というカップルが多いことに気づきます。
「仲はいいから大丈夫」が落とし穴!?
「一緒に住み始めたらしなくなるものだって、みんな言ってる」「子供が生まれたら、そんな余裕なくなるよね」「仲はいいんだから、問題ないよね」
そうやって過ごしているうちに、気付けば半年、1年と時間が過ぎて「わたしたち、セックスレスなのかも」と焦る人の多いこと。
実は、セックスレスはある日突然始まるものとは限りません。夫婦の生活が少しずつ変わり、会話が変わり、ふたりの時間が減り、触れ合いが減り、その延長線上でセックスがなくなっていきます。
もちろん、セックスのない夫婦が悪いわけではありません。仕事や育児、体調などによって「したい気持ちになれない」期間もあれば、「むしろしない方がうまくやっていける」タイプの夫婦もいます。セックスし続けることが「夫婦としての正解」とは限りません。
問題なのは、本当はしたいのにできない、言えない、相手がどう思っているのかわからない状態になってしまうことです。
日本の夫婦の6割がセックスレス
まず知っておきたいのは、セックスレスは決して珍しいことではないということです。ジェクスの「ジャパン・サーベイ2024」によると、婚姻関係にあるカップルの64.2%がセックスレス。つまり、今やセックスレスのカップルの方が多いということです。
*この調査では「セックスレス」を、特殊な事情が認められないにも関わらず、性交あるいはセクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上なく、その後も継続されることが予想できる状態と定義しています。
「うちだけじゃない」と思えると、少し気持ちが楽になるかもしれません。ただ、その一方で「でも本当はセックスを続けたい」「このまま何年もセックスがないのは寂しい」「まだレスではないけれど、このまま減っていったらどうしよう」と感じている人もいるはずです。
大切なのは、世間一般がどうかではなく、今のふたりがどう感じているか。セックスがなくてもふたりとも満足しているのなら、それもひとつの夫婦の形です。でも、どちらかが「本当は続けたい」と思っているなら、その気持ちまで「みんなそうだから」と片づけなくてもいいんです。
だからこそ、レスになってから「どうしよう」と考えるのではなく、「このままだといつかレスになるかも」と感じた時点で、ふたりの関係を見直してみてほしいです。
ここからは、セックスレスになりやすい夫婦の特徴を見ていきましょう。
セックスレスになりやすい夫婦の特徴
会話が業務連絡ばかり
「何時に帰る?」「保育園のお迎えお願い」「牛乳買ってきて」「今度の休みどうする?」気がつけば、こんな会話ばかりになっていませんか。共同生活をしていく上で必要な会話ですが、これだけではまるで業務連絡です。
夫婦になると、いつの間にかお互いのことを知り尽くしていると思いがちです。でも、人は毎日少しずつ変わります。嬉しいことがあったり、悩みがあったり、好きなものが変わったりと、必ずアップデートしているはずです。だからこそ「今日どうだった?」「何かあった?」と聞くことは、思っている以上に大切です。こういった会話がなくなると、相手の“今”を知らないままになってしまうかもしれません。
不満を溜めている
「別に怒るほどのことじゃないし」「言ったらケンカになるかも」「今さら言ってもしかたない」
そんな小さな不満は、どこの夫婦にもたくさんあります。もちろん、すべてを言い合わないことで共同生活がうまく回ることもあります。でも、小さな不満が積み重なって「私ばっかり家事してない?」「生理痛が辛いのにわかってくれない」「私のこと、全然見てない」と感じるようになってくると、相手とセックスしたい気持ちにも影響することがあります。
セックスレスは、セックスだけの問題に見えても、実はこういった日常生活の小さなモヤモヤが隠れていることもあります。
触れ合いがセックスの前だけ
セックスの始まりは、いつもベッドの中。お風呂に入って、パジャマを着て、歯を磨いて「さぁ寝よう」と思ったら、布団の中でガサゴソと体をまさぐってくる。それがセックスのお誘いになっていませんか。
キスやハグもセックスをするときだけ。そんな風に、体に触れ合うことがセックスの前だけになっている夫婦は、少し注意が必要です。
そうなると、「触れ合う=セックスしたい」という意味になりやすく、セックスしたくない日は、自然と触れ合いを避けたくなってしまいます。
④セックスについて話したことがない
セックスレスの夫婦の中には、自分たちの性生活についてほとんど話したことがないという人も少なくありません。下ネタなら話せるのに、自分たちのセックスについてはタブー。そんな夫婦も多いのではないでしょうか。
「週に何回くらいしたい?」「どんな風に始まるのか好き?」「どんなタイミングでしたくなる?」そんなことをパートナーと話し合ったことはありますか。
自分たちのセックスについて話せないでいると、しばらく期間が空いたときに「最近してないね」と言い出すことも難しくなります。本当は言いたくても「避けられたらどうしよう」「今さらセックスの話なんて恥ずかしい」と、つい黙ってしまいます。言われる側も答え方に戸惑うかもしれません。
セックスレスを防ぐために今からできること
セックスレスを防ぐために大切なのは、セックスそのものだけでなく、日常的にふたりの親密さを育てていくことです。「親密さ」と聞くと曖昧でわかりづらいかもしれませんが、ふたりの心の距離の近さや、セックスも含めた特別なつながりを指します。
では、親密さを育てていくために今からできることは何でしょうか。
ふたりの話をする
業務連絡的な会話だけでなく「今日は仕事どうだった?」「最近は何を読んでるの?」など、相手の“今”を知れる会話を意識してみましょう。
そして、できればセックスの話もしてみてください。「そういえば、セックスについてちゃんと話したことなくない?」「どういう時にしたくなるの?」まずは気軽な会話からで十分です。
ここで大切なのは「セックスについて話したら、今夜しなきゃいけない」という空気にしないこと。「今度の休み、何しようか?」くらい気軽に切り出すのがコツです。
切り出しにくいと感じたら、出会った頃の話から始めてみるのもおすすめです。「最初のデートってどこに行ったっけ?」「どっちからキスしたか覚えてる?」「最初にセックスしたときって、どんな感じだった?」なら話しやすいかもしれません。
「あの時は会うたびにしてたのに……」「昔の方がよかった」などネガティブにならないよう注意しましょう。
触れ合いを日常的に
手をつなぐ、腕に触れる、キス、密着して寄り添う、ハグ。こうした触れ合いを、セックスするときだけにならないよう、日常的に取り入れることも大切です。
「キスを求めたらセックスのお誘い」と感じるようになると、セックスをしたくない日にはキス自体を避けたくなってしまいます。だからこそ、セックスにつながらない触れ合いを続けるようにしましょう。
朝、仕事に出かけるときのハグでもいいし、テレビを見ながら肩を寄せるだけでもいいです。むしろ「何もしなくても触れ合っているだけでいい」という時間がふたりの親密さを育てます。
断られることを恐れない
セックスを誘う側にとって、一番怖いのが「断られること」かもしれません。しかし、セックスを断られたからといって、愛情が減ったわけではなく、魅力がなくなったわけでもありません。誰にでもしたくない日や、できないタイミングはあります。それは男性も女性も同じです。
大切なのは、セックスのお誘いを重くとらえすぎないこと。断られても関係が壊れるわけではありません。「食後に1杯つきあって」「今日映画観にいかない?」くらいの感覚で、少し気軽に誘ってみる。そして、断られても「そっか、また今度ね」と軽く受け止める。そんな空気ができれば、断る罪悪感や断られる恥ずかしさから解放されます。
回数や頻度を気にしない
「週に何回するのが普通?」「〇ヶ月空いたからもうレス?」
セックスの回数や頻度は、どうしても気になります。しかし、夫婦の性生活の形に正解はありません。大切なのは、週に何回しているかより、その回数でふたりが満足しているかどうかです。2か月に1回でも、ふたりとも満足していれば問題ありません。反対に、週に何度もしていても、どちらかが無理をしていれば、それも「うまくいっている」とは言えません。
長い人生の中では、仕事や体調、妊娠・出産、育児、加齢などによってセックスの頻度が変わるのは当然です。場合によっては、長くセックスを休むこともあるでしょう。大切なのは、今の自分たちにとってちょうどいい性生活はどんなものかをふたりで一緒に考えることです。「セックスが減った=失敗」と考えるのではなく、そのときのふたりの心や体に合わせて性生活もアップデートしていくことが必要です。
おわりに
セックスレスにならないことが、夫婦のゴールではありません。大切なのは、セックスが減ったときもふたりで話せること。したいときには「したい」、したくないときには「今日はちょっとゴメン!」と言えることです。
週に〇回など決まった回数をこなすのではなく、セックスについて話せる関係をつくっておくのが、レスを予防する一番の近道なのかもしれません。
性科学×リアルな性の話。 著書『新しいセックス』(扶桑社新書)。AM“素敵ビッチのたのしい性活”、ar web“オンナの性活”連載中。Podcast、note(テクニック記事)でも活動している。